医療統計学を学ぶ大学生のブログ

医療統計学、因果推論を専攻しています。R, SASユーザーです。

横断研究とコホート研究の話

 

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(Image by ferna ndozhiminaicela from Pixabay)

疫学研究は大きく観察研究と介入研究に分類されますが、今回は観察研究の一つであるコホート研究と横断研究について解説をします。

特に目新しさはないですが、研究のデザインというものは疫学や医療統計に関わる方にとっては必須なので、復習の意味も込めて目を通してもらえるといいかと思います。

 

 

はじめに

研究デザインの話をするときに、時間の概念を示す言葉が出てくるので先にそれらを簡単にまとめてみます。分析的な疫学研究は時間的な観点からみると横断研究と、縦断研究の二つに分かれます。

 

横断研究については後程詳しく扱っていきますが、これはある時点(T=t)での、もしくは、ごく短期間での測定データをもとにした研究です。国勢調査などがその一例に挙げられます。(より正確に言えば連続横断研究ですが…)

 

これに対して時間的な経過を伴う研究は、縦断研究と呼ばれます。そしてさらに縦断研究は、その時間変動の向きによって前向き研究(Prospective Study)か、後ろ向き研究(Retrospective Study)かに分かれます。(下図参照)

 

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横断研究

横断研究は冒頭でも述べたようにある時点で行われる研究です。この研究の主な目的は調査対象となる集団の特徴(分布)を知ることに ありますが、その解釈には注意が必要です。

横断研究で得られた結果は、単にある特徴量(例えば年収)を把握するだけでなく、様々な因子同士の関係性を調べるのにも使われます。ここで重要なのは横断研究で因果関係を見出そうとするのは限りなく難しいことであるということ、つまり、基本的には、因子同士の相関関係しかわからないということです。もし仮にあるアウトカムを変化させる因子を探そうとするのであれば、横断研究ではない別な研究デザインが必要となります。

 

しかし、因果関係はわからないにしろ横断研究には様々なメリットがあります。研究集団の特徴を把握することは、別な研究の出発点にもなりえますし、それだけで非常に重要な結果です。またアウトカムの発生を待たずに、その時点での結果を観察するので、規模にもよりますが、比較的低コストで済みます。

 

コホート研究(Cohort study)

 コホート(Cohort)とは、古代ローマの軍隊で使われていた兵士の集団を表すラテン語です。そして現代の疫学では、研究対象となる一定期間追跡(フォローアップ)される集団という意味でこの言葉は使われています。

 コホート研究の主たる目的は、疾病の発生とその要因となる曝露を明らかにすることであり、追跡の時間的方向によって下記の二つに分かれます。

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前向きコホート研究(Prospective cohort study)

前向きコホート研究では、研究対象となる曝露群と非曝露群の集団(コホート)を定義し、それぞれの集団に対して興味のあるアウトカムと、そのアウトカムに影響があると思われる因子を、前向きに継続しながら測定します。

 

この研究では、将来に向かって実験を行うわけですから、目的となるアウトカムの発症(発生率)を測定することが可能です。また後ろ向きコホートとは異なり、各測定項目はベースライン時点から継続した正確な測定が可能なので、より精度の高いデータを得られることも大きなメリットです。

ただ観察研究の大きな問題の一つである、交絡因子による因果への影響や、選択バイアスの一種である脱落バイアスなどには十分な注意が必要です。加えて、発生が稀な疾患については大規模なコホートを、長期間にわたってフォローアップしなければならないので、コストが非常に高くなってしまうといったデメリットも存在します。

 

後ろ向きコホート研究(Retrospective cohort study)

 後ろ向きコホート研究の前向きコホート研究と大きく異なる点は、コホートの設定や、ベースラインでの測定、フォローアップなどが既に終了しているということです。これによって後ろ向きコホートでは、前向きの場合と比較して比較的低コストで研究を行うことが出来るというのが利点の一つです。

 

しかし後ろ向きコホート研究では、測定項目の精度やその内容をコントロールすることがでいないため、得られるデータが正確でなくなったり、欠損していることも多々あります。

 

 

 最後に

コホート研究ではフォローアップ期間中の脱落による選択バイアス(いつかまとめます)や、いかに交絡の原因となる要因を精度よく測定しているかといったことなどが、研究結果の質に大きく影響しています。また測定する項目によっては、その内容を知っていることによる影響が出てしまうため、盲検化をするといったこともバイアスを減らすために非常に重要です。

 

ここまで長々と書きましたが、現実問題としてバイアスをできる限りなくして研究を行っていくのはなかなかに難しいことだなと痛感しています。ただ、こういったことを先に知っておくだけでも将来的に生かせる部分があると思うので、理論と応用をバランスよくできたらいいかなと考えているこの頃です。