医療統計学を学ぶ大学生のブログ

医療統計学、因果推論を専攻しています。R, SASユーザーです。

YBS勉強会:『ロスマンの疫学』第1, 2章まとめ

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(Image by Elsemargriet from Pixabay)

 最近設立した医療統計、疫学を学ぶサークルの活動を本日より開始しました。当面の間はこのブログの中で勉強会の内容等について共有させていただきます。輪読している本の章末問題に関しては、学生の議論の結果を載せさせていただくのでぜひコメントや意見などあればよろしくお願いします。

 本記事の序盤は設立した勉強会に関することですので、興味がない方は飛ばしていただいて構いません

 

 

医療統計勉強会 YBS(Yokohama Biostatistics Seminar)に関して

設立の背景、目的

 現在、筆者が在学している大学にはデータ解析に関連するサークル・団体はありますが、医療統計に関することを中心に学ぶ団体はありません。Biostatisticsという分野は、かなり専門性を要求される分野でもありますし、大学の一部の授業だけではなかなか手が届かないことも多くあります。

 こういった背景と複数の教員の方々のご協力もあり、つい先日医療統計を学ぶサークル、YBS(Yokohama Biostatistics Seminar)を立ち上げました。命名に関しては京都大学大学院のKBSを敬意をもって参考にさせていただきました。大学の公認サークル化をするか否かに関しては、今年度の活動を鑑みて年度末にその必要性を検討しようと思っています。

 

今後の流れ

 現段階でサークルには1~3年生が複数所属しています。一口に医療統計を学ぶといってもメンバーの統計に関する知識には非常に差があるため、しばらくの間は1, 2年生は「臨床研究の道標」、「宇宙怪人しまりす」といった比較的読みやすい本を、3年生は「ロスマンの疫学」を輪読する予定です。

 下級生に先立って、本日よりロスマンの疫学の輪読が始まりました。もしよろしければコメントなど宜しくお願いします。

 

 ロスマンの疫学:科学的思考への誘い

 今回輪読を行うロスマンの疫学は、Kenneth J. Rothmanの「Epidemiology: An Introduction」の訳書となります。この書籍については特に言及する必要はないかと思いますが、近代疫学を学ぶ上ではかなり定評がある良著です。

 英語版については語学の勉強もかねてちょっとずつ読もうかと思います。

 

 

第1章 疫学的思考の紹介

内容まとめ

  • 疫学とは「疾病頻度の分布と決定要因に関する学問」、「病気の発生に関する学問」
  • 導入としてあえて交絡の例を紹介(交絡の詳細については7章)

 

パナマスウェーデンの人口年齢分布の例

  • 死亡者の割合は、スウェーデンのほうが大きい(直感に反する)
  • 年齢ごとにみるとどの年代でもパナマのほうが死亡者は多い
  • どの国も高齢者のほうが死亡率は高く、スウェーデンのほうが平均年齢は高い
  • ”年齢の分布”の違いによって交絡

 

英国ウィッカムにおける喫煙者を対象とした研究の例

  • 喫煙群、非喫煙群全体でみると喫煙群のほうが死亡リスクは低い
  • 年齢別に見たとき、最年少、最高齢では特に差はない
  • 中間年齢層においては喫煙群のほうが死亡リスクは高い
  • 研究対象集団の年齢の分布の差による交絡

 

→交絡は疫学において根深い問題であるが、唯一の問題ではない

 

章末問題

問題
  1. 年齢は疫学においてしばしば交絡の原因となる変数である。その理由の一つは多くの疾病の発生は年齢により変化するからである。年齢により疾病リスクが変化するのは、しばしば年齢効果と呼ばれる。疾病リスクに影響を及ぼすものとして年齢を考えることは理にかなっているか?それとも年齢効果はそれ自体がほかの因子に交絡されていると考えるほうが賢明か?

  2. ロサンゼルスではサンフランシスコよりも毎年心血管疾患で死ぬ人が多い。この違いをセル名するうえで最も重要な点は何か死亡者数を説明するのにさらにどんな要因が考えられるか?

  3. 表1-2で、20年間の死亡リスクに喫煙が最大の影響を及ぼしたのはどの年齢グループといえるか?「最大の影響」をどう定義したか?ほかにどんな定義があるかどの年齢グループであると答えるかは、最大の影響をどう定義するかによって違ってくるか?

  4. 方眼紙に表1-2のデータを使って年齢に対する20年間の死亡リスクをグラフにしなさい。水平線に年齢を、垂直軸に20年間の死亡リスクを取り、曲線の形状について述べなさい。どのような生物学的影響がその形状にもたらされているか?

  5. ジャズに興味のある医師が、ジャズ百科事典からジャズ演奏者を特定し死亡年齢を調査した。ジャズ演奏者の平均死亡年齢は一般集団とほぼ同じであった。この結果をもって、ジャズ演奏者は自堕落な生活をしがちでほかの人より死亡率が高い、という一般通念に反証したと医師は結論付けた。医師の誤りについて説明しなさい。

  6. ある研究者が、左利きは右利きよりも平均死亡年齢が低いということを発見し、左利きは危険であると判断した。彼は正しいかなぜ正しいか?あるいはなぜ正しくないか?

  7. 2つの集団において、平均年齢もしくは、ある疾病にかかった平均年齢を引かうすることの根本的な問題は何かこの問題をどうやって解決するか?

 

解答(議論結果)
  1.  一概にいうことはできないが、生きた年月(年齢)によって疾病のリスクは上昇することが多い。これは年齢自体というよりは、生物としての機能の低下などが直接の原因であるが、年齢を交絡要因として調整を行うことは理にかなっている。

  2. ロサンゼルスとサンフランシスコの比較としか述べておらず、人口やその分布といったことを考えていないためこの比較は適当でない。

  3. 最大の影響をリスク比、リスク差という指標の大きさで見た場合には35-44, 55-64歳の層。今回の全体の結果が想定していたことと逆になってしまった理由の最大の原因(喫煙者のほうが死亡リスクが低い)を最大の影響としてとらえた場合には、20年間の死亡リスクが非常に高い65-74, 75+の層。

  4. 各年代ごとで見ると喫煙者の群のほうが死亡リスクが高い。最年少、最高齢の層においてはほぼ変わらない。

  5. いわゆる選択バイアスの存在。ジャズ百科事典に掲載されている人に研究対象を限定しており、載らずに亡くなった人は考慮されていない。

  6. 正しくない。矯正の問題や、年代ごとの分布などほかの情報が必要。

  7. 最も極端な例としては、新生児と高齢者を研究集団とした場合には当然のごとく平均死亡年齢、疾病にかかった年齢が異なる。集団を比較可能なものにするということが重要。

 

第2章 疫学と公衆衛生の先駆者たち

内容まとめ

公衆衛生の起源

  • 水の供給と衛生設備
  • 感染症の制御
  • ペスト流行期間の隔離が現在の「検疫」に

 

ヒポクラテスからスノウそして現在へ

  • ヒポクラテス
    • ギリシャの医師
    • 環境要因が健康へ影響している可能性を指摘
  • アヴィセンナ(イブン・スィーナー)
    • 実験と数量化を生理学、医学の研究に取り入れる重要さを主張
  • フラカストロ
    • 接触伝染という考え方
    • 病原菌説の先駆け
  • ジョン・グラン
  • ベルナルディーノ・ラマツィーニ
    • 産業医学分野での先駆者、職業病とその要因について関心
  • ウィリアス・ファー
    • 人口動態統計、コレラに関する功績
  • ジョン・スノウ
    • 疫学と麻酔学の父
  • センメルヴェイス・イグナーツ
    • ハンガリーの英雄、先駆的疫学者(当時は異端者)
    • 産褥熱に関する研究、消毒の概念の導入へ
  • フローレンス・ナイチンゲール
    • クリミア戦争期における看護への貢献
    • 疫学者、統計家としても活動
  • ジャネット・レーンクインボン
    • 症例対象研究の発案者(諸説あり)
  • ウェイド・ハンプトン・フロスト
    • ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院で大学初の疫学部門初代教授

 

この他にも、公衆衛生、疫学分野で著しい功績をあげてきた偉人は多い。特に疫学的な活動の高まりは20世紀から現在に至るまで続いている。

 

章末問題

問題
  1. 疫学調査はコンピュータを使えば一段と容易になるが、行うことは集団での事象を数えることに基づいており、特に科学技術に依存するものではない。疫学調査の実施を必要とする発想は、はるか昔から発展し応用されてきた。疫学調査がなぜ20世紀の半ばまで当たり前のことにならなかったのか、推測せよ。

  2. スノウもセンメルヴェイスも、最近接が受け入れられる前にいかに感染症を防ぐかを示す研究を行った。しかしファン・レーフェンフックが顕微鏡で発見した微生物を初めて紹介して以来、微生物の存在はほぼ200年間知られていた。19世紀の科学者たちが疾病における微生物の役割を受け入れる妨げとなった。当時の社会的、科学的考え方の特性について推測せよ。

  3. グラントとファーは、公的記録や人口動態統計を調査することで疫学の分野を前進させ、何世代にもわたる疫学者に模範を示した。スノウやセンメルヴェイスなど他の者は、かなりの時間と努力を必要とするが、個々人の努力で可能な、自分たちのデータを収集する研究を考案した。今日特別な目的で疫学データを集めることは費用がかかり、ときに共同の努力や、ピアレビュー(専門家による審査)を経て承認される必要があるかなりに資金を必要とする。もしピアレビューが火いつようであったなら、スノウやセンメルヴェイスの障害になりえた可能性がある。科学研究の資金獲得におけるピアレビュー制度の長所と短所を列挙して議論せよ。
解答(議論結果)
  1. コンピュータの普及、インターネットによって情報の蓄積、共有が容易になったため?あと可能性としては戦争

  2. その当時の見解(宗教的なものも含め)が妨げとなった?

  3. 長所:信頼性の高い研究結果、不正の減少
    短所:時間がかかる。出版バイアス