医療統計学を学ぶ大学生のブログ

医療統計学、因果推論を専攻しています。R, SASユーザーです。

有害事象と副作用、副反応の使いわけ

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(Image by Fanette from Pixabay)

最近のコロナ関連のニュースではワクチン投与後の反応のことを、初期の「副作用」ではなく、「副反応」という言葉を用いて報道されています。ある医学研究のデータ分析を始めているのですが安全性プロファイルにも目を通す機会があり、後学のためにも有害事象や副作用、副反応という言葉の区別、意図するところについてまとめていこうと思います。

安全性プロファイルとは

 日本製薬工業協会(製薬協)がまとめている「科学的な医薬品リスク管理計画実践のための安全性検討事項・研究課題の設定」という報告書の中で、医薬品の安全性評価、安全性プロファイルに関しては次のように記載がされています。

安全性評価科学の目標は,特定の医薬品が投与された患者集団全体として何が起きるのかの全体像(安全性プロファイル)を知り,当該医薬品との因果関係を見極めること,重大な副作用による防ぐことのできたはずのリスクを最小化する策を講じ,医薬品の適正使用につなげることである。(一部抜粋)

 

 つまり、安全性プロファイルとは治験のような臨床試験で、介入(Ex, 投薬)を受けた患者に関して起きた有害事象をまとめたものです。これは、継続的に更新が行われ、医薬品の安全性評価や、リスク・ベネフィット評価に用いられます。

 

有害事象と副作用

有害事象と副作用は言葉のイメージとしては似たものですが、厳密には異なります。

まずは、日本の医療機器や医薬品の認可を取り仕切っている、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)によるICH-E2Dの日本語訳である、「承認後の安全性情報の取り扱い」での、それぞれ定義を見てみます。

 

有害事象

有害事象とは、医薬品が投与された患者に生じたあらゆる好ましくない医療
上の出来事であり、必ずしも当該医薬品の投与との因果関係があるもののみを
指すわけではない。すなわち、有害事象とは、医薬品の使用と時間的に関連の
ある、あらゆる好ましくない、意図しない徴候(例えば、臨床検査値の異常)、
症状又は疾病のことであり、当該医薬品との因果関係の有無は問わない。

 

副作用

各地域の規制、行政指導及び慣例によって確立されているように、副作用と
は医薬品に対する有害で意図しない反応をいう(注1)。

(注1) 日本では、投与量にかかわらず、医薬品に対する有害で意図しない反応を副作用という。

 

まとめると副作用に対して、有害事象とはもう少し広い範囲の言葉です。投薬を受けた被験者はたまたま発熱や、嘔吐をする場合もあります。副作用は介入による因果効果が認められるもの、否定できない関係の場合に用いられるのに対し、有害事象は関係性が不明なものも含むという下図のような関係性になっています。

 

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副反応

 副反応という言葉は、最近の新型コロナウイルスに対するワクチン投与に関しての報道で非常によく聞く言葉です。

 ワクチン投与の目的は免疫反応を引き起し、特定の病原体への免疫をつけることです。この際、主たる目的である免疫を持たせること以外にも、発熱や接種部分の痛みといった有害な事象が発生します。こうしたワクチンによって引き起こされる有害な反応(因果効果あり)を医薬品による副作用と区別して副反応と呼ぶわけです。

 

ちなみに、新型コロナのワクチン接種の副反応が1回目よりも2回目のほうが重い理由は、免疫記憶のためです。これは、一回目の抗原侵入よりも二回目の抗原侵入のほうが、より速く免疫反応が起こり、かつより多くの抗体が生産されるというものです。(詳しくは生物の教科書へ)

 

まとめ

 結局の話、有害事象として集まった事例が本当に因果効果のあるものなのか(副反応)の判断はなかなかに難しいものであり、慎重な判断が要求されます。ですがこういった情報の蓄積と活用により、現在の医学があるわけです。

 

 7月の頭に新型コロナのワクチンを打ってくるので、嬉しさ8割、副反応への不安2割な現在ですが、いつかはワクチンのような研究にも携われたらいいなということで今回の記事は終わります。