医療統計学を学ぶ大学生のブログ

医療統計学、因果推論を専攻しています。R, SASユーザーです。

YBS勉強会:『ロスマンの疫学』第3章まとめ

 

  「ロスマンの疫学」の輪読は2週間に一回のペースで、3年生を中心としたメンバーで行っています。6月末に行った第3章の輪読内容についてまとめていなかったので、ちょっと遅くはなりましたが、簡単に内容と、章末問題について記載します。

 

 

 

第3章 因果関係とは何か?

内容まとめ

因果のパイモデル 
  • パイモデルの"パイ"(pie)とは 

 ある疾患に対する「因果メカニズムcausal mechanism」の一つ。十分原因(sufficient cause)

 ある疾患が複数の発生メカニズムを持つときには複数のパイで表現されるパイは原因構成要素(component causes)ごとに分割され、複数のパイに同一の原因構成要素が存在しうる 。

 

  • 因果のパイモデルの意味 

 どのような因果メカニズムも複数の原因構成要素の連携作用によるとする。 因果関係の重要な原則 。

 

  • 遺伝要因と環境要因 

 あらゆる疾患の症例はすべて遺伝と環境の両方の要因を併せ持つ 。一方、事実上100%の疾患が遺伝性である 環境要因によって引き起こされるとも言える 。ただし、たいていの場合、遺伝要因の多くは操作することはできず、操作できるのは環境要因のみである。 

 

  • 原因の強さ 

 他の原因構成要素と比べたときの、役割の重要さ(=ある原因がどれくらい多くの症例に関与しているか。) 他の要因の発生頻度に依存するため、他の原因の分布が変化すれば集団ごと、時代ごとに異なる


例)喫煙は肺がんの強い原因で、ラドンガスの曝露は弱い原因である。仮に、喫煙を完全に撲滅したとすると、喫煙に代わってラドンガスの曝露が強い原因となる。 

 

  • 原因間の交互作用

いくつかの原因要素が結果に共同して作用している。以前の外傷など、時間的に同時とは限らない。
統計学的な交互作用とは異なる 

 

 その曝露が除去された場合に全集団の罹患率が減少するであろうと思われる割合。寄与分画の合計は100%にならない。上限なし 

→交互作用により、ひとりの疾患に複数の原因が関与する可能性があるから 


例)肺がんに罹患した集団の中で75%は喫煙で、67%は飲酒を原因とすることは可能。喫煙と飲酒の両方が原因となって発症した患者もいるから。 

 

  • 誘導時間 

・期間(induction period )

 ある原因構成要素が作用してから、一番最後の原因構成要素が作用し、疾患が生じるまでの期間。最後の原因構成要素(アウトカムの引き金)の誘導期間は0。 疾患自体は誘導期間を持たず、原因構成要素に関してのみ誘導期間を定義できる 

 

・潜伏期(latent period) 

 疾病の発生からその後の診断までの期間 。誘導期間と潜伏期を区別するのは困難 。
疾患の早期発見により誘導期間それ自体を短くすることはできないが、バイオマーカーにより因果メカニズムの途中段階を観察することは可能。

 

  • 促進剤は原因か?

 促進剤は原因。 
→促進剤に曝露した時点で疾病が起こらなくても、疾病発生の時期は事象の定義の一部であるため また、発症前に死亡する可能性があることを考えると、促進剤は疾病が起こるかどうか、いつ起こるかを決定しているため。 逆に、他の要因の誘導期間を引き延ばす要因は予防的とみなす。

 

科学的推論過程 

演繹法deduction) 
 いわゆる三段論法。実世界の問題を扱いにくい 


帰納法induction 
観察からより普遍的な考えを誘導。デイビッド・ヒュームが批判「帰納法は論理的力をもたない」 
 

カール・ポパーによるヒュームに対する答え自然に対する見解は証拠により「裏付け」されるが、裏付けは論理的な証明には匹敵しない 。
仮説は核心に迫る検証にさらすことにより評価される

 
例:水の沸点についての「推論と反証」の繰返し 
繰返し実験して100℃で沸騰することを示す 
→「水は100℃で沸騰する」仮説を支持証明はしない 
高地では94℃で沸騰することを発見 
→「水は100℃で沸騰する」仮説を棄却。「異なった大気圧下では沸点が異なる」仮説に置き換え。 


弱点:理論や前提や観察という誤りを免れないものに左右される 

 

  • 因果の基準 

ヒルの基準(詳しくは以下の別記事で) 

norihirosuzuki.hatenablog.com

 

  • 疫学における一般化

・調査標本抽出(survey sampling)での一般化 

研究集団を標本として、目的集団について推論を行う。統計学的代表性(statistical representativeness)が重要。調査集団外には結果を適用できない(外挿性 

・科学的知識に基づく生物学的代表性(biologic representativeness)統計学的代表性 

・科学的一般化 

一般化の過程において、科学知識や洞察、自然への推測に基づく。科学的知識に基づく生物学的代表性(biologic representativeness)が重要。

 

章末問題

問題
  1. 次の記述を批判せよ:結核の原因は結核菌の感染である。
  2. 黄脛と呼ばれる鶏の形質は、特定の遺伝種のニワトリに黄色いトウモロコシを食べさせると出現する。この種のニワトリだけを飼っている農夫にとっては、この形質の出現はもっぱら餌次第で、すなわち黄色いトウモロコシを与えるかどうかにかかっている。黄色いトウモロコシしか餌に使わないがいくつかの種のニワトリを飼っている農夫にとっては、この形質は遺伝性である。両方の農夫に対して、あなたはこの形質が環境と遺伝の両者で決定されるということをどういう論理で説明するか?
  3. ある新聞記者が、糖尿病は遺伝性でも環境性でもなく、多要因によると述べていた。ほかの記事は大腸がんの半分は遺伝的要因に関連があるとしていた。両者のメッセージを批判せよ。
  4. ある致死的疾患に対する新しい治療法が、平均死亡時期を20年遅らせることができたとする。この新しい治療法は死亡のリスクを減じたといってよいか?それとも単に死亡を遅らせただけか?
  5. 通常、ある暴露-疾患関係において長い誘導期間を持つ場合は、短い場合に比べて研究はより困難である。暴露-疾患関係の誘導期間が長いことからどのような困難が起こるか?
  6. AとBが100%致死性の疾患の原因であり、したがって1人の人にこの疾患は一度しか起こりえない場合を考える。AとBの両方に暴露した人たちの中で、AかBどちらかを原因とすることのできる疾患の最大の割合はどれだけか?A、Bそれぞれを原因とする割合の合計の最大値はいくつか?AとBが異なった因果メカニズムにおいてのみ働き、決して同じメカニズムでは作用しないとする。この場合あなたの答えは異なってくるか?
  7. 帰納法的主張になじんでいるため、皆この方法による推論を日常に用いる。例えばこれまでと同様明日も太陽は昇る。帰納法の批判者によると、この知識は信念と前提に基づき、心の慰めにしかすぎないという。どうして科学者にとって、科学的推論が帰納法に基づくのか、それとも推論と反証など別の方法に基づくのかが大きな問題なのであろうか?
  8. 疫学的研究が、競合する仮説の少なくとも一方を反証した例をあげよ。
  9. 因果による関連がありながら、生物学的用量関係(ヒルの第5基準)の証拠を示すことができないことがあるか?説明せよ。
  10. 心血管疾患に関与する社会経済因子の影響を研究していたとする。もし研究対象者が、(1)一般人口と同じ社会経済因子の分布を示した場合、(2)社会経済因子の各カテゴリーについて同じ数だけ選び出された場合、のどちらが有用な情報を提供するか?それはなぜか?

 

解答(議論結果)
  1.  結核菌の感染は要因の一つではあるが、結核十分条件ではない。
  2. もう一方の農夫にあってもらう(or別な環境で飼育してみる)。要因を変えた場合の比較ができていないため。
  3. 前者→遺伝性でも環境性でも”ある”
    後者→すべての大腸がんの症例は遺伝的要因を持つ
  4. よい
  5. 脱落の問題、費用的な問題(このほかにもありますが)
  6. 100%, 200%, 同じ
  7. 帰納的議論には論理的必然性がない。単なる事象の関連性に基づく因果推論は論理的誤謬を導く可能性。
  8. 省略
  9. 要因とアウトカムの発生がU字型の曲線を描くとき(Ex, BMI
  10. (2)?
    社会経済因子で層別した各群の共変量の分布が等しければGood。このあたりはサンプリング法にだいぶ内容が近い気が。