医療統計学を学ぶ大学生のブログ

医療統計学、因果推論を専攻しています。R, SASユーザーです。

母関数についてのまとめ

 母関数について今回はまとめていこうと思います。個人的に最初に母関数を見たときはそもそもどういうものかイメージがつかみづらかったり、統計の本だと展開の途中式が省略されていたりとなかなか初心者にとってはハードルが高いので、ここではできる限り途中式も省かずに丁寧に進めていこうと思います。いつものことですが、実はまだTexが書けないので、Wordで作成した数式を張り付けるという形になります。(すみません)

 また確率や収束範囲に関しての厳密な議論は行っていないので、その部分に関しては別途参考書等を見ていただければなと思います。

 

参考図書

この記事で参考にしている統計関連の図書は以下の通りです。

  • 竹村彰通 『現代数理統計学』 学術図書出版

母関数とは

(数理)統計学ではしばしば”母関数”というものが登場します。母関数を利用するメリットは、母関数と確率分布が1対1対応していること、つまりどちらか一方を定めればもう一方が一意に定まるという点にあります。統計学では確率分布の期待値や分散などに注目することが多いため、この母関数もそれらを求める際に使用されることが多いというわけです。

ただ母関数と一口に言っても母関数として利用されるものには以下の3つがあります。

  1. 確率母関数
  2. 積率(モーメント)母関数
  3. 特性関数

ここで母関数が確率分布と1対1対応するのは次のようなためです。

  • 確率(密度)関数→母関数

各母関数の定義より明らか(後述)

  • 母関数→確率(密度)関数

逆転公式(母関数から確率関数、密度関数を求める公式)の存在によるもの。なお積率母関数、特性関数の逆転公式は結構複雑。公式の内容というよりは存在自体によって、1対1対応が保証されるので個人的には中身まで暗記する必要はないかと思います。

 

次はそれぞれの母関数についてみていきます。(期待値、分散の導出も)

 

確率母関数

確率母関数G(t)は、主に非負(≧0)の整数値をとる離散型確率変数の確率分布に対して用いられます。Ex)二項分布、ポアソン分布

G(t)の定義は、確率関数をp(x)とすると、

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と定義されます。なお、期待値の収束条件より|t|≦1です。

 

確率母関数を用いた期待値、分散の導出は以下の通り。

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積率母関数でもそうですが、この母関数を用いた期待値、分散の導出はよく出題されるかなと思います。また、積率母関数をk階微分して得られる期待値を階乗モーメントと呼びます。

 

積率母関数

次に説明するのは積率(モーメント)母関数Φ(θ)です。確率母関数では扱う確率変数が非負の離散値であったのに対し、積率母関数では一般に連続型確率変数についても用いられます。確率母関数におけるs=e^θとしたものが積率母関数に当たります。(θ≦1)

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ここでe^θXについてマクローリン展開を行うと、

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となることから、これの期待値は

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となります。つまり積率母関数をk階微分し、θ=0とすることでXのk次の積率(モーメント)を得ることができるわけです。これを利用し期待値、分散の導出したのが下記。

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なお問題なのは積率母関数の存在(E[e^θX]<∞)ですが、今回は存在する(収束する)という仮定の下で式展開を行っています。

 

特性関数

積率母関数は項目の最後にも書いたように積分の収束の問題があり、それが存在しない分布(Ex, コーシー分布)もあります。それに対して特性関数Φ(t)はすべての分布に対してそれが存在するため、最も一般性が高い母関数であるとみることが可能です。

特性関数Φ(t)では、積率母関数Φ(θ)において虚数単位iを用いて、θ=itと置いたものと定義されます。つまり、

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なお二つ目の等号はオイラーの公式において、X→tXとしたものです。

 

定義上は実数部分と虚数部分に分解されますが、itをそのまま定数とみて積率母関数と同様に微分を行い、t=0とおくことでk次のモーメントを算出することができます。

 

以上が母関数に関してのまとめです。この記事の続きとして、いくつかの分布での母関数の利用についてもまとめるので具体例が知りたい方はそちらをどうぞ。