この記事はこちらの母関数についての記事の続きとなっています。母関数自体についてのまとめを見たい方はそちらをどうぞ。
今回はいくつかの分布での母関数を用いた期待値、分散の算出を行っていきます。ちなみに統計検定1級等でも出題がありました(2019[1])。数式は相変わらずWordで張り付けたものとなっています。すみません。
離散型分布
二項分布
二項分布において試行回数をn、成功確率をpとするとその確率関数p(x)は
これより、二項分布の確率母関数G(s)は
なお2行目から3行目については、以下の二項定理においてa=tp, b=1-pとしています。
ここで確率母関数の期待値、分散の算出式は
であり、
であることから
となります。
ポアソン分布
次に考えるのはポアソン分布です。ポアソン分布はnp=λ(一定)とし、n→∞とした場合の確率分布です。
ポアソン分布の確率関数p(x)は、np=λより二項分布においてp=λ/nとし、n→∞とすることで
と求めることができます。ここで青線を引いてある部分についてはn→無限大としたときに1になり、赤線の部分については以下の関係式において、y=-λとして得ています。
ちなみにこの二項分布のポアソン分布への収束の収束のことを、ポアソンの少数の法則と呼びます。
というわけで、二項分布の確率母関G(t)は
となります。また、2行目から3行目については以下のテイラー展開においてλ=tλとしたものを利用しています。
期待値、分散は二項分布の時と同様に計算して
負の二項分布
負の二項分布(NB)は初めてr回成功するまでの失敗回数を確率変数Xとし、パラメータを成功回数r、成功確率pとしたものです。
負の二項分布の確率関数p(x)は、r回目の成功直前までの試行と、r回目の成功をそれぞれ別に分けて考えてあげることで、
と表すことができます。
ここで確率母関数は
となります。この二行目への変換は以下のマクローリン展開を利用したものです。なおq=1-p, マクローリン展開におけるqをqtとした場合です。
よってこれまでと同様にG(t)を微分し、t=1としていくことにより、以下の期待値、分散が算出されます。
連続型分布
正規分布
正規分布N(μ, σ^2)に従う確率変数Xの確率密度関数f(x)は、
積率母関数Φ(θ)は
この積率母関数の導出の最後の等号に関しては、∫以降が、平均μ+θσ^2、分散σ^2の確率密度の全範囲の和であるので1となることを使っています。
積率母関数Φ(θ)のk階微分してθ=0と置いたものは、Xのk次モーメントになるので以下のように期待値、分散を導くことができます。