生物統計学を学ぶ大学院生のブログ

統計的因果推論、生物統計学、R・SASの実装方法について更新

母関数の利用をした期待値、分散の算出

本記事はこちらの母関数についての記事の続きです。今回は母関数を用いていくつかの主要な分布の期待値・分散の算出を行っていきます。

norihirosuzuki.hatenablog.com

 

離散型確率変数

二項分布

二項分布において試行回数をn、成功確率をpとするとその確率関数p(x)

これより、二項分布の確率母関数G(t)

2行目から3行目に関しては、以下の二項定理においてa=tp, b=1-pとしています。

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ここで確率母関数を用いた期待値、分散の導出は

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であり、

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であることから

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となります。

 

ポアソン分布

ポアソン分布は二項分布においてnp=λ(一定)、n→∞とした場合の確率分布です。ポアソン分布の確率関数p(x)は、np=λより二項分布においてp=λ/nとし、n→∞とすることで

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と求めることができます。ここで青線を引いてある部分についてはn→∞としたときに1になり、赤線の部分については以下の関係式(ポアソンの少数の法則)において、y=-λとして得ています。

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二項分布の確率母関G(t)

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となります。2行目から3行目については以下のe^λテイラー展開においてλ=tλとした場合の結果を利用しています。

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期待値、分散は二項分布の時と同様に計算して

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負の二項分布

負の二項分布は、成功確率がpであり、r回成功するまでの失敗回数を確率変数Xとした確率分布です。負の二項分布の確率関数p(x)は、r回目の成功直前までの試行と、r回目の成功を分けて考えることで、

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と表すことができます。ここで確率母関数は

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となります。この2行目への変換は以下のマクローリン展開を利用したものです。なお、q=1-pであり、マクローリン展開におけるqqtとした場合です。

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よって、これまでと同様にG(t):を微分し[tex:t=1とすることにより、期待値と分散が算出されます。

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連続型の確率分布

正規分布

正規分布N(μ, σ^2)に従う確率変数X確率密度関数f(x)は、

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積率母関数Φ(θ)

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最後の等号に関しては、平均μ+θσ^2、分散σ^2の確率密度関数の全範囲での積分であること(1となること)を利用しています。

積率母関数Φ(θ)のk階微分してθ=0と置いたものは、Xのk次モーメントとなるため、以下のように期待値と分散を導くことができます。

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